文書作成日:2025/04/01
贈与者が贈与した年の中途に死亡した場合の相続時精算課税選択届出書の提出先

[相談]

 私は今年、父からの財産の贈与について相続時精算課税の適用を受ける予定でしたが、その届出書の提出前に父が亡くなりました。
 そこでお聞きしたいのですが、上記の贈与に係る贈与税について私が相続時精算課税の規定の適用を受けようとする場合、その適用を受けるために提出が必要な届出書(相続時精算課税選択届出書)の提出先は、私の納税地の所轄税務署長でよいのでしょうか。教えてください。

[回答]

 ご相談の場合における相続時精算課税選択届出書の提出先は、ご相談者様ではなく、お父様の死亡に係る相続税の納税地の所轄税務署長となります。詳細は下記解説をご参照ください。

[解説]

1.相続時精算課税の選択制度の概要

 贈与により財産を取得した人がその贈与をした人の推定相続人(※1)であり、かつ、その贈与をした人が同日において60歳以上である場合には、その贈与により財産を取得した人は、その贈与に係る財産について(贈与税について)、相続時精算課税の規定の適用を受けることができると、法律で定められています。

 上記の規定の適用を受けようとする人は、その選択に係る最初の贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までの間(贈与税の申告書の提出期間)に、納税地の所轄税務署長に対し、贈与をした人からのその年中における贈与により取得した財産について相続時精算課税の規定の適用を受けようとする旨その他一定の事項を記載した届出書(相続時精算課税選択届出書)を、一定の書類とともに、納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。

 なお、相続時精算課税選択届出書に係る贈与をした人からの贈与により取得する財産については、その届出書に係る年分以後、相続時精算課税の規定により、贈与税額を計算することとなります。

※1 その贈与をした人の直系卑属である人のうちその年1月1日において18歳以上である人に限ります。

2.相続時精算課税に係る贈与税の特別控除の概要

 相続時精算課税適用者がその年中において特定贈与者(※2)からの贈与により取得した財産に係るその年分の贈与税については、特定贈与者ごとの相続時精算課税に係る基礎控除額(110万円)控除後の贈与税の課税価格からそれぞれ次に掲げる金額のうちいずれか低い金額を控除すると、法律で定められています。

@2,500万円(既に相続時精算課税の規定の適用を受けて控除した金額がある場合には、その金額の合計額を控除した残額)
A特定贈与者ごとの相続時精算課税に係る基礎控除額(原則:110万円)控除後の贈与税の課税価格

 なお、上記の規定は、期限内申告書に相続時精算課税の規定により控除を受ける金額、既に相続時精算課税の規定の適用を受けて控除した金額がある場合の控除した金額その他一定の事項の記載がある場合に限り、適用すると定められています。

※2 特定贈与者とは、相続時精算課税の選択に係る贈与者をいいます。

3.贈与者が贈与した年の中途に死亡した場合の相続時精算課税の選択

 特定贈与者からの贈与により相続時精算課税の規定の適用を受ける財産を相続時精算課税適用者が取得した場合において、その特定贈与者がその贈与をした年の中途において死亡したときは、その贈与により取得した財産については、贈与税の申告書を提出する必要はないと、法律で定められています。

 ただし、上記の場合においても相続時精算課税の規定の適用を受けるためには相続時精算課税選択届出書を提出する必要はあり、また、今回のご相談の場合のように、贈与をした人が年の中途において死亡した場合における相続時精算課税選択届出書の提出は、通常の場合とは異なり、(贈与により財産を取得した人ではなく)その贈与をした人の死亡に係る相続税の納税地の所轄税務署長にしなければならないと定められていますので、ご注意ください。

[参考]
相法21の9、21の12、28、62、相令5、相規11、措法70の3の2、相基通21の9-2、21の9-3など

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明誠税理士法人
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